おもに西日本の海岸で見られる海浜植物
(現在22種アップしています。)
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アマモ アマモ科
アマモ
オモダカ目 アマモ科 雌雄同株
別名: 龍宮の乙姫の元結の切り外し
的形海岸には、アマモが繁茂していました。
じっくり見ると、根元にキサゴなどの貝類がついていたり、卵のような白いものが点々とついています。(アマモのタネもこんなふうに着くようです。)
葉のヘリには、イギスが付着していました。
イギスは、テングサやオゴノリのように寒天みたいな食べ物になります。

↑茶色い藻のようなものは付着しているイギスです

↑白い卵が並んで付着しています
アマモは、いったんは陸上植物となり再び海の中に戻った種子植物です。
海辺でニラのような葉が打ち上がっていたら、観察してください。地下茎でつながっており、それを噛むと甘味がするそうです。
海藻(かいそう)と同じ読みなので、区別するために「うみくさ」と表現する人もいらっしゃいます。
イワダレソウ クマツヅラ科
クマツヅラ科 イワダレソウ属 Phyla nodiflora

撮影:2014/7/12 静岡県 御前崎
「なんだろう…。ネコノシタ?」そう思って葉を触ってみました。
ざらつきません。ネコノシタは葉がざらつくと図鑑に書いてあるのです。
「コレなんだろう…。」調べた調べた。イワダレソウでした。
匍匐(ほふく)した多肉質の葉と、花が咲いたあとが土筆(つくし)のように見えます。
花が満開だったら、ランタナと見間違いそうです。
オカヒジキ アカザ科
アカザ科 オカヒジキ属 Salsola komarovii

・ 栽培したものが流通しており、日常的に食べる土地もある。
・ 葉の先は痛くないと書いた冊子もあるが、実際に触ってみると割に痛い。
・ 小さな小さな花が、葉腋(ようえき:葉っぱの根元)に咲く。
・ 海浜植物の中では、最も波に近いところまで生育できるように思う。
・ 同じアカザ科のシロザが海辺に生えているのを、よく見る。
オニシバ イネ科
イネ科 シバ属 Zoysia macrostachya
・ 意外や意外、これも海浜植物だ。
・ 地下茎でつながっている。
・ 同じ海浜植物のコウボウシバは、
「シバ」と付くが、カヤツリグサ科だ。
ケカモノハシ イネ科
イネ科 カモノハシ属 Ischaemum anthephoroides
・ 実(み)がパカッと割れたところが、カモのくちばしに似ている。
・ 観たい観たいという思いは、鳥取砂丘でかなった。
・ どうも、発芽率が低いように思う。
コウボウムギ カヤツリグサ科
カヤツリグサ科 スゲ属 Carex kouboumugi
・ コウボウとは平安時代の三筆の一人、あの弘法大師(=空海)のこと。
・ 実が毛筆のように見えるという解説もある。
・ 砂に埋もれた葉鞘(ようしょう)で筆を作ったという説がある。
砂を掘って観察すると、なんとなく納得がいく。
ただ、筆に作るには、相当量が要りそうだ。
三筆: 空海(くうかい)、嵯峨天皇(さがてんのう)、橘逸勢(たちばなのはやなり)
コウボウシバ カヤツリグサ科
カヤツリグサ科 スゲ属 Carex pumila
・ コウボウシバ、コウボウムギ、オニシバ…似たような植物に見える。
・ コウボウシバは、コウボウムギとは違い雌雄同株(しゆうどうしゅ)だから、
花や実の時期の見分けは簡単だ。
・ じつは、よく見ると葉だけの時期でも見分けられる。
同じ緑色でも青が強いほうが本種なので、「隣の芝生(しばふ)は青い」と
憶えておくと、「名前にシバが付くほうが青い」と見分けられて迷わない。
ツルナ ツルナ科
ツルナ科 ツルナ属 Tetragonia tetragonoides

・ ハマミズナ科と書いているサイトもあるが、山と渓谷社の『日本の野草』に
従い、ツルナ科としておく。
・ ツルナのナは「菜」、須磨でもつるのように這い上がっている。
・ 葉が少し肉厚で、粉をふいたように白い。
福岡教育大学のサイトに、その様子が分かる拡大画像がある。
・ 黄色の花は可憐で、タネの形はユニークだ。
・ 特徴の詳細は、内閣府沖縄総合事務局のサイトへ
トベラ トベラ科
トベラ科 トベラ属 Pittosporum tobira

和歌山県の加太、田倉崎海岸の脇を歩いていると、どこからともなく甘い香りがして来た。「樹木が臭うから扉にさして魔よけにした」というけれど、臭気どころか柔らかい良い香りだ。
樹も大きく育っており満開で、ハナムグリ(昆虫)があちこちに花に潜り込む姿が見えて幸せな気分になった。
ハマアザミ キク科
キク科 アザミ属 Cirsium maritimum
兵庫県 絶滅危惧1類
・ 不意に触ると、刺が強くて肌が切れるので、注意がいる。
・ 黄色い花粉と赤紫の色合いが、とても美しい。
・ 国立科学博物館のサイトによると、根を食べるようだ。
・ 右の写真には、枯葉に隠れるニホントカゲの左前足が見える。
ハマウド セリ科
セリ科 シシウド属 Angelica japonica
・ 初めて見た時は、その大きさに驚かされた。
・ 成人女性くらいの高さになるが、草本だ。茎も太く、直径6cmほどあった。
・ 左の写真には、交尾中のアカスジカメムシと、仮面ライダーがとまっている。
・ 手持ちの図鑑には食べられるかどうかの記載がないが、
食用と書くサイトと、毒があると書くサイトがあり、下処理をすると珍味
との記述や、まずくて食用に向かないと書く記述など、様々ある。
ハマエンドウ マメ科
マメ科 レンリソウ属 Lathyrus quinquenervius
・ 海岸の花は、紫系の色が多い。この花も可憐な色だ。
・ 海辺のマメ科で代表的な種は、本種とハマナタマメがある。
大きさが全く違うので、見間違えることはない。
本種の花は紫色が濃く、ハマナタマメの花はピンク色だ。
ハマオモト ヒガンバナ科
ヒガンバナ科 ハマオモト属 Crinum asiaticum var.japonicum
・ ハマユウの名前のほうが、知っている人が多いと思う。
・ 潮風や砂浜がない場所、例えば大阪の市街でも強く育つ。
・ 分かれた花の様子は、か弱く繊細で、クチナシに似た良い香りがする。
・ 繊細な花の形状と香りにそぐわず、茎と葉は、太くたくましい。
・ どうやらタネを支えるには重過ぎるようで、たいていの花茎は倒れている。
ハマゴウ クマツヅラ科
クマツヅラ科 ハマゴウ属 Vitex rotundifolia
・ この花も紫色で美しい。
・ 葉をもむと良い香りがし、タネを複数個こすり合わせると良い香りがする。
・ 日本薬学会のサイトによると、平安時代の貴族は、
ソバガラ枕ならぬ「ハマゴウ枕」で安眠を手に入れたようだ。
↓ハマゴウの群生↓

ハマダイコン アブラナ科
アブラナ科 ダイコン属 Raphanus sativus var. hortensis f. raphanistroides

・ 畑のダイコンが野生化して海辺に適応している。山と渓谷社の
『日本の野草』によると、肥料を与えて育てるとダイコンに戻るらしい。
・ ダイコンの花は黄色いが、本種の花は薄い紫色か、白い。
・ タネの形状に特徴がある。真珠のネックレスのような真ん丸さで
4、5個のタネがさやの中に並んでおり、おのおのの間は極端にくびれている。
また、さやの先端は長くとがっている。
ハマナス バラ科
バラ科 バラ属 Rosa rugosa
兵庫県 絶滅危惧1類
ある浜の植物の間に、まるで隠れるように咲いていた。
そのまま元気に育つのヨ。
花と同時についていた実は、2週間後に行ってみると少し大きくなっていた。
(希少種ですが、自生ではなく植えられている場所ならここ!)
観察してみたいかたは、アジュール舞子にある孫文の移情閣にお出かけください。
門をくぐり建物の入り口の前まで行けば、しっかり育った株が複数あります。
また、香櫨園浜には大きな株が育っています。
ハマナタマメ マメ科
マメ科 ナタマメ属 Canavalia loneata
・ 海辺にいることを忘れて葉だけを見ると、クズに見える。
・ 薄いピンク色の花は、マメ科の花に共通の形状をしている。
・ ぷっくりと膨らんだ鞘(さや)に入っているタネは、
鞘の大きさから想像した大きさより、小ぶりだ。
ハマナデシコ ナデシコ科
ナデシコ科 ナデシコ属 Dianthus japonicus
・ 初めて見たときは、3mほど上の岸壁に張り付いて咲いていた。
・ 岩場の様な環境でも、好きなようだ。
・ 海辺で見られるナデシコ科では他に、砂浜でも生育できるマンテマ、
海からほんの少し離れた場所に育つイヌコモチナデシコなどが挙げられる。
ハマヒルガオ ヒルガオ科
ヒルガオ科 ヒルガオ属 Calystegia soldanella
・ 砂浜では、よく見る植物だ。
・ 花期、浜一面に広がる薄いピンク色が可愛らしい。
・ 大抵の子ども達は、この植物のタネ集めが好きだ。
・ 南のほうに生育するグンバイヒルガオというのがある。
相撲の行司が持つ軍配(ぐんばい)に葉が似ているから、この名がつく。
温暖化が原因なのか、生育域を北へ伸ばしているという情報がある。
まだ須磨海岸には根付いていない(越冬できるほど暖かくないようだ)。
ハマボウフウ セリ科
セリ科 ハマボウフウ属 Glehnia littoralis
・ 海辺の厳しい環境に適応して、地をはうように生育している植物が
海辺には多い。本種もその一つだ。
・ 美味しそうな強い香りがする。
・ 花が咲く→つぼみができる→タネができる、この経過が劇的で、面白い。
・ 左の写真では、セリ科の植物が大好きなアカスジカメムシが、
花が咲いたあとのピンク色の実の中に潜り込んで、ゴソゴソしている。
ハマボッス サクラソウ科
サクラソウ科 オカトラノオ属 Lysimachia mauritiana

・ 仏具の払子(ほっす)に似ているから、この名だという。
払子と言われて画像が頭に浮かぶ人は、そういないのではないかと思う。
・ 発芽率は高いように思うが、発芽後の移植に成功しない。
案外、大事に別ポットで発芽させず、ダイレクトに植えておけば
そのあと簡単に育つのかも知れない。
外来種 アブラナ科 オニハマダイコン
鳥取県
・ 鳥取県の誰も居ない浜で、奇妙な草本をみつけた。
「もしや」と思い調べてみると、やはりオニハマダイコンだった。
・ 人が来ない浜=人の手入れが行き届かないところ
=侵入した外来種には繁茂し易い環境…ということなのだなぁと、理解した。
・ 塩分
・ 強い日差し
・ 砂に埋もれる
・ さえぎるもの無く吹く風
砂浜には、植物にとって厳しい環境がそろっている。
これらの条件に適応した植物は、たいてい地面に這いつくばって生育している。
また海から続く砂浜の幅が広いほど、そこに生育する海浜植物の種類は増える。